高速バスより安い!大人も使える青春18きっぷで岐阜~仙台往復

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遠方の知人と旅行に行く打ち合わせをしていて「18きっぷで合流地点に向かう」と言われ、学生時代の貧乏旅行を思い出した。社会人になってからは会社の出張や貴重な休日でわざわざ鈍行に乗る趣味もなく、その存在を忘れていた青春18きっぷ。購入に年齢制限もなく年末年始は1/10まで使えるようなので、数十年ぶりに購入して大人げなく格安旅行を楽しんできた。

学生に戻った気分で岐阜から仙台まで片道15時間。さすがに足腰が疲れたが、1日当たり2,370円で東京から西は福岡の小倉、北は秋田の大館まで1日1,000kmも移動できる18きっぷはLCCや高速バスをしのいで最も安い長距離移動手段だと再認識した。使用期間は春夏冬の休みの期間に限られるが、逆にこの時期バスや空路は繁忙期で高くなるので利用価値は高い。

「ムーンライトながら」はすでに全席完売

岐阜から仙台への往路は東京で用事があったため1泊して2日かけて向かった。大垣~東京間には夜行列車の「ムーンライトながら」を使うという必殺技があるらしい。ちょうど年末年始も臨時で走っている時期なのだが、えきねっとで調べたらすべて満席。毎年人気で申し込み開始直後にすぐ売り切れてしまうようだ。

「ムーンライトながら」は18きっぷと併用できて、追加で必要な指定席券が520円。夜中に乗り換えなしで東京まで行けるので便利そうに思えたが、日付をまたぐので18きっぷが2回分必要になってしまう。上りだと0時を超えるまでの大垣~豊橋区間は別途切符を買えばよいのだが、JRで1,940円、岐阜~豊橋間で名鉄を使っても合計1,710円かかる。

さらに「ムーンライトながら」に寝台車はなく、通常シートでリクライニングして寝るしかない。おそらく満席でぎゅうぎゅう詰め、横になれない上、夜間照明も落ちないらしい。これではバスより窮屈で、目的地に着く前に疲れ果ててしまいそうだ。

雨露しのげるところがあれば野宿でも車中泊でも問題ないのだが、バスやサウナのリクライニングシートで寝るのは苦手。最近は時間がかかっても夜行バスより昼行バスを選ぶくらいなので、「ムーンライトながら」は多少便利でも不経済で性に合わない気がした。

大垣駅名物「大垣ダッシュ」を目撃

早朝に大垣駅で18きっぷを買って名古屋方面に向かう。年末年始で朝から「みどりの窓口」に行列ができていて、予定の電車に乗るのはぎりぎりだった。しかも改札からホームにたどり着くまでに、まるで通勤ラッシュの立川駅(青梅線>中央線乗り換え)のような行列ができていた。

あとから調べたら、俗に「大垣ダッシュ」と呼ばれる名物風景であったようだ。養老/樽見鉄道や米原からの乗り換え時間が異様に短く、ホームをまたぐ移動距離も長いため、席取りというより電車に乗れるかどうかで猛烈なダッシュが発生するらしい。

18きっぷで自動改札は通れず、改札で駅員さんに見せてから出入りしないといけない。有人改札もお客さんで並んで意外と待たされることがあるので、18きっぷの旅は何事も早めに済ませた方がよい。スケジュールがタイトでなければ、あえて乗り換えを失敗して下りたことのない駅前を探索してみるハプニングも楽しいのだが。

豊橋駅の乗り換えおやつは藤田屋の「大あんまき」

名古屋~静岡間では往路復路とも豊橋駅で10分以上の乗り換え時間があった。改札内にコンビニと成城石井があり、どちらもSuicaで決済できるので食料補給にちょうどよい。知立名物「大あんまき」というお店が出ていたので、ためしに170円の「白あん」を1本買ってみた。

あんこを小麦ベースの生地で巻いてあるのだが、中身はほぼ「どら焼き」だ。コンビニで売っているどら焼きは1か月くらい日持ちするが、大あんまきの賞味期限は翌日。保存期間は短くなるが、餡の砂糖を減らして甘さ控えめにつくってあるのが藤田屋のこだわりらしい。確かにあんこが甘すぎず生地もふっくらで上品な味がした。

熱海駅がリニューアルして無料の足湯も出現

静岡県は東西に長いが、太平洋岸の海が見えて車内に陽光がさんさんと降り注ぐので気持ちよかった。1ヶ月滞在していた岐阜の山は若干日本海側の気候に近く、雨が多くて気温も低い。冬には1mの積雪も稀でないという。やはり定住するなら太平洋側、首都圏にも名古屋にも出やすい静岡あたりがいいなあと考えつつ車窓を眺めていた。

往路は東京で一泊するので、温泉にでも入ろうと熱海で途中下車してみた。かつて安く売りに出ていたリゾートマンションの物件を下見に来てから2年ぶりの熱海。駅ビルがリニューアルしておしゃれなレストランやお土産屋が入っていた。昔はいい感じに寂れた温泉駅で、改札前ではミカンを袋売りしていた記憶がある。

駅前に足湯もできていたが、ここはスキップして一駅先の湯河原で温泉に浸かってみた。 湯河原駅は熱海に比べるとコンビニくらいしかなくて見劣りするが、ホームのベンチに座布団が置いてあってちょっと感激した。寒い冬の吹きさらしのホームで少しだけお尻を暖めてくれる座布団に、温泉街のおもてなし精神を感じる。

日付が変わっても終電まで乗車OKな「電車特定区間」

東京に到着してのんびりしていたら、自宅に帰る時刻が0時を回ってしまった。18きっぷなので日付をまたいだ途端2日目にハンコを押されてしまうのかと焦ったが、都心であれば「電車特定区間」という例外で終電まで乗車OKだったらしい。

実際には、西は奥多摩、武蔵五日市、高尾まで含まれるかなり広いエリアが特定区間であった。他にも大宮、千葉、久里浜くらいまでが含まれるので、18きっぷなら都心で目いっぱい遊んでから終電で帰宅するのもありだろう。ちなみに関西の電車特定区間は京都~奈良~和歌山~西明石までが含まれる。

宇都宮駅で餃子を食べるなら西口のおみやげ館が穴場

東京で1泊して用事を済ませ、2日目は目的地の仙台へ向かう。ちょうど宇都宮で昼飯時になったので、途中下車して餃子を食べてみた。特に店舗にこだわりはなく、駅ビルにあった宇味屋と宇都宮餃子館のうち若干安かった後者に入店。

定番っぽい健太餃子を注文したが、300円で中程度の大きさの焼き立て餃子が6つ。乾燥したニンニクチップが入っていてちょっと臭いが気になるが、期待通りの普通の餃子でおいしくいただけた。

ちなみに仙台からの帰りでも宇都宮で下車したが、今度は駅の西口を出て線路沿い南の路地に入った「おみやげ館」に行ってみた。駅前には他にも餃子店が多く、お昼時で一部は行列ができていたが、おみやげ館は自分以外誰もいなかったので穴場かもしれない。

メニューを見るとここも健太餃子だった。また300円の餃子1人前頼んだが、100円でコーヒーも追加できる。しかもサービスでみかんを2つもらえた。おみやげ館でご飯はオーダーできないが、餃子とコーヒーとみかんの謎な組み合わせで食すのが宇都宮スタイルだ。

駅ナカ店もおみやげ館もSuica決済できるので、乗り換え時間がタイトな時はうれしい。しかし注文してから餃子を焼きはじめて出てくるまで10分くらいかかるので、コーヒーを飲んでのんびりしていたら、いつの間にか次の電車を逃してしまった。焼き立て餃子はうまいが、乗り換え時間には余裕をもって食べに出よう。

必ず乗り換えが必要になるが、何もない黒磯駅

宇都宮を過ぎた先、黒磯という駅で行きも帰りも乗り換えが必要になった。どうやらここで東北本線が直流から交流に切り替わるらしく、20分以上も待たされることになる。

黒磯と言えば昔は駅弁の釜飯で有名だったようだが、今は改札外のコンビニくらいしかお店はない。試しに駅を出てしばらく歩いてみたが、どこにでもある寂れた商店街でこれといった見どころもない。那須おろしというのか、山から冷たい北風が吹いてくるので、たまらず駅に撤退した。

黒磯から仙台までは延々と田園風景だが、刈り入れが終わった田んぼと落葉した木々の寒々しい風景が続く。東北は毎年のように行くが、福島のあたりは震災・原発事故後に一層寂れた印象がある。時々、安達太良や蔵王の山並みが見えるのが楽しみなくらいで、途中下車して楽しめそうな駅も少ない。18きっぷで旅する東北本線、栃木~福島エリアは長くて侘しい区間だ。

18きっぷとe特急券の組み合わせで新幹線には乗れない

仙台から岐阜への復路は気合を入れて1日で走破してみた。朝7時に仙台市内を出発して22時頃に岐阜駅に到着。宇都宮で餃子を食べている間に電車を乗り過ごしたり、途中何度か乗り換えを失敗して最終目的地まで辿りつけず、岐阜のカプセルホテルで一泊することになった。

途中で後れをカバーしようと一部区間の新幹線利用を検討した。スマホのモバイルSuicaからエクスプレス予約にログインして、e特急券だけ追加購入すれば18きっぷと併用で新幹線に乗れないかと思ったが、改札で聞いたところ不可だった。18きっぷは新幹線の乗車券としては使えないらしい。

ネットで新幹線「ワープ」術が紹介されているが、乗車券・特急券を含めて普通に新幹線のチケットを買うことになるので高くつく。新幹線の追加費用を短縮時間で割って単位時間あたりのコスパを競うような、マニア向けのテクニックだろう。

18きっぷ長旅の必需品はスマホ用モバイルバッテリー

1日15時間も鈍行に乗って長距離移動するのは、さすがに学生の頃も試したことがなかった。座ってばかりだと膝やお尻が痛くなるので、ときどき立ったり足踏みしてエコノミー症候群になるのを防いだ。この点、電車は車内で動ける自由度があり、首都圏以外の路線ではトイレも付いている車両もあるので、高速バスの昼行便より過ごしやすい。

18きっぷの旅で必需品は、スマホ用のモバイルバッテリーだ。途中下車して楽しそうな駅を調べたり、乗り換えミスで路線を検索したりするのにスマホは必須だが、15時間も乗っているとさすがにバッテリーが切れそうになる。新幹線のように車内で充電できるコンセントもないので、予備バッテリーはあった方がよいと思った。

電車で全国縦断しながら小松左京の『日本沈没』を読む

また、車酔いしない人なら1日10時間以上も缶詰になって読書できるのは貴重な機会なので、日ごろ読みたかった長めの小説とか持参するのがおすすめだ。今回は小松左京の『日本沈没』上下巻をKoboに入れて持ってきたが、ちょうど神奈川~静岡で作中に出てくる富士火山帯を通過したので気分が盛り上がった。

将来は熱海か下田のあたりに温泉・介護サービス付きのリゾートマンションを買って余生を過ごしたいと空想するときがあるが、『日本沈没』によると有事の際は天城山が噴火して真っ先にやられるエリアだとわかった。小田原を過ぎて海岸沿いに見下ろせる真鶴道路も、富士山噴火でヒロインが絶命する場所である。沼津を過ぎて富士市に出れば大爆発する宝永火口が見え、こんなところは人間が住む場所じゃないと思った。いつ地震が来て脱線するかとひやひやしながら電車に乗っていた。

地震や異常気象で自然災害が増えてきた今日、まだ『日本沈没』を読んでない人がいたら、18きっぷに乗って日本縦断しながら上下巻、さらに第二部も読破する旅をしてみるのはいかがだろう。終盤のクライマックスは乗鞍岳なので、松本~糸井川を南北に横断する大糸線はぜひルートに入れてみてほしい。