ミニマリストの名刺入れ考察~本革コードバン vs 紙製カードリッジ

財布と手帳をスリム化した次は、ビジネスマンの必携アイテム名刺入れだ。退職した後は基本的に名刺を使わない。しかし、たまにある自己紹介や取り引きの場面で、名刺があった方が話がスムーズに進むということもある。

名刺入れはどこまで軽量化できるのかという興味から、CARDRIDGEの極薄ケースを買って試してみた。

名刺にまつわるエトセトラ

生きていく上で必要ではないが、仕事上は欠かすことのできない名刺入れ。単に名刺を保護して持ち運ぶだけなら、紙袋でもビニール袋でも何でもよさそうである。

全国のミュージアムショップで売られている「フロシキシキ」は隠れたグッドデザインでないかと思う。ビニール同士の粘着力で持たせるという仕組みが画期的だ。なかなか息の長い製品だが、いつの間にか名刺入れだけでなくiPadケースやバッグまで出ていた。

フロシキシキ ペンケース (ブラック)

フロシキシキ ペンケース (ブラック)

 

丁寧に扱うなら、ビックリマンのシールのように名刺を輪ゴムで十字に留めるだけでも用は足りる。出力業者から納品されたプラスチックや厚紙のケースをそのまま使っている人も多いだろう。

ビジネスマナー上は革製が無難

ところがバイト時代に受講させてもらったJALアカデミーのマナー研修では、「名刺入れは革製に限る」との指導だった。

腕時計もシンプルな三針のアナログ時計がベストで、派手なスポーツウォッチやデジタル式のG-SHOCKなどもってのほかと教わった記憶がある。ブラックフェイスのミリタリーウォッチはギリギリセーフだが、ナイロン製のNATOストラップはNGだろう。

今は事業統合してキャプランという会社になったようだが、元キャビンアテンダントが講師をしてくれるビジネスマナー研修は大変参考になった。特にベンチャー勤めやフリーランスで新人研修を受けたことがなく自信がない人は、一度受講すれば大いに役立つことだろう。業種によっては英会話を習うより効果がある。

マナー研修には当然名刺の受け渡しも含まれるが、「名刺入れを座布団のように添えて相手様の名刺をお預かりする」とか、細かいテクニックをいくつか伝授される。実は名刺入れとは、単なる名刺の入れ物ではなく、ネクタイのようなコミュニケーションの道具なのである。

なぜ名刺入れには留め具がないか?

各社の製品を比較して疑問に思うのだが、なぜ名刺入れにはボタンやファスナーの留め具がないのだろう。ポーターの安い名刺入れにはホックがついていたりするが、革製の高級品にはたいてい折りたたみの蓋しかない。

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ネットで調べてもわからなかったので仮説だが、挨拶の最中にケースの開閉でパチパチ音を鳴らすのは失礼という、日本人的な配慮があるのではなかろうか。先日、ポスタルコのカードケースを触ってみて、ボタンの閉まる音が大きいのは気になった。またJALのお姉さんに会ったら理由を聞いてみたいものだ。

個人には、ボールペンのノック音も打ち合わせで相手にストレスを与えると考えている。カランダッシュのペンが廉価帯から高級品まで、ノック式にもかかわらず極力音がしない機構になっているのは、そういう考え方によるのかもしれない。

モンブランのボールペンのようなツイスト式の方がもっと上品だが、実用性を考えたノック式でかつスマートに見せる開発上の工夫があったのではなかろうか。

長年愛用している革の名刺入れ

ということで、学生バイトの身分とはいえ取引先と挨拶するため手に入れた革の名刺入れは、キプリスのオイルシェルコードバンだった。外側は硬質なコードバンだが、内側は柔らかめの牛革という実用性を考えたハイブリッド製品だ。

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実は人からのいただきもので大事に使っていたのだが、海外出張中にうっかり落としてしまった。オーストリアの旧市街で石畳の上を探して歩き、結局見つからなかったのでこっそり自分で買い直したという、思い出深い品物である。

失くしたのがクレジットカードやパスポートでなくてよかった。しかしさすがに質の良い馬革で、職人技の製法も入っているので、名刺入れでも2万円はした。

ポケットにV字型の切れ込みが入っているせいか、たまにヴァレクストラと間違われることがある。そちらはさらに高いブランド品だが、4万円の名刺入れなど持っていたら気をつかって疲れそうだ。実は並行輸入品だと価格はそれほど変わらない。

国内メーカーのキプリスですでに十分すぎるクオリティーなので、名刺入れにこれ以上何を求める必要があるのかと思う。車もよく走るカローラで十分である。

コードバンは一番長持ちする

実は他に持っている牛革製のシステム手帳、ブライドルレザーの財布と比較するため、コードバンを選んだという理由もある。

馬革といえばALDENのシューズが有名だが、とても学生が買える金額ではない。せいぜい背伸びして、名刺入れで試してみたという感じだ。

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牛革、馬革、ロウ引きと3種類の革製品を10年単位で使ってみると、それなりに傷が増えてもコードバンが一番強かったようだ。コバは剥がれてきたが、表面は色褪せせずほとんどメンテしなくてもツヤツヤ輝いている。

財布や手帳に比べると名刺入れは出番が少ないというハンデもあるが、放置しておいても全然劣化しないのが馬革の利点だろう。

超薄型名刺入れカードリッジ

退職して日々の予定がなくなり、システム手帳は薄型のダイアリーにグレードダウンした。

同様に名刺入れも軽量化しようといくつか検討した中で、最薄に見えたのがカードリッジである。値段も安いので、試しにアマゾンで一番薄い0.5mmのCARDRIDGE AIRを注文してみた。

ロンド工房 カードリッジ プロ 名刺入れ ブラック CP201

ロンド工房 カードリッジ プロ 名刺入れ ブラック CP201

 

届いてみると思いのほか薄いというより、ただの紙である。厚手の包装紙くらいの素材で、表面にある凹凸と箔押しのロゴが、少しだけ高級感を演出している。マチのないサイズ感とサイドの切れ込みは、計算され尽くされたバランスのようだ。

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リタイア後は謙虚にいこうと思って、コピー用紙のように最薄ケント紙で新しい名刺をオーダーした。名刺自体もあまりに薄すぎて貧相な感じだが、おかげでカードリッジに10枚は入る。

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普通の厚さの名刺なら、せいぜい5枚くらいが限度だろう。公式サイトの説明通り、メイン利用というより、手帳や財布に挟んでおいてサブ活用というのがふさわしい。

実際使うと結構恥ずかしい

試しに出張に持って行って、カードリッジで取引先と名刺交換してみた。色は黒くても近くで見ると紙とわかるので、自分でも微妙に思われた。

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似たようなコンセプトの製品で、タイベック製のブリーフケースを使っているが、こちらはかなり近寄ってみないと革にしか見えないメリットがある。「鞄といえば革製」という固定観念も影響しているのだろう。

それまでがコードバンの高級名刺入れだったので、あまりの落差に我ながら恥ずかさを覚える。顧客と初対面の挨拶でこんなに気をつかうくらいなら、元の革の名刺入れを持ってきた方がよかったと後悔した。

やはり名刺入れというのは、軽さや機能性よりも相手方への印象を第一に考えるべきアイテムだと悟った。

AIRの耐久性はぶっちゃけ低い

1泊程度の出張で、ガジェット類と一緒にカードリッジを小物ポーチに入れていたが、すぐによれよれになってしまった。こうなると名刺入れというより、「むき出しよりはまだまし」という包み紙になってくる。

名刺を収納するだけなら、東急ハンズに売っているメッセージカードを入れる小型封筒とか、ポチ袋でも間に合いそうだ。

むしろ、おもしろい柄のお年玉袋から名刺を取り出して、話のきっかけをつくるのもありだろう。

革製カードリッジは贈り物によさげ

一応カードリッジをフォローすると、最薄のAIR以外にもう少し厚みがあるPROと、革製のデュンもラインナップされている。この形状で革という意外性がおもしろい。

価格も2千円台なので、競合品のアブラサスの名刺入れより半額で買える。あちらはケースを挟んで名刺をポップアップさせる仕組みがユニークだが、ビジネスシーンを考えるとカードリッジの蓋式の方が無難だろう。

HISの「変なホテル」みたいなネーミングで、abrAsusの「薄い○○」シリーズは、あからさまにミニマリストをターゲットにしているのが癪である。他人が持っているとミーハーに見えるが、むやみに買い直してモノを増やせないので「うらやましい」というのが実は本心だ。

革のカードリッジもカラーバリエーションが豊富なので、ちょっとしたプレゼントに喜ばれそうだ。もっとも相手がミニマリストだと、モノへのこだわりが強すぎて簡単に気に入ってもらえない可能性もある。速攻で断捨離されて、「あとでゴミ箱の中で発見した」という悲しいことにならないように、事前に探りを入れた方が無難だ。

カードリッジでサブ名刺を分散収納

カードリッジの製品群は、紙製なら500円台、革製でも2,000円強という価格の安さが売りである。これを逆手にとってサブ用途と割り切り、いたるところに名刺を保管しておくという技も可能だ。買ってから気づいたが、AIRは最初から2枚入りだった。

実際に、自分もかつては「鞄を替えたら名刺入れを忘れた」という失敗を繰り返し、そのうちすべてのバッグに数枚ずつ名刺を忍ばせておくようになった。

当時はホームセンターの資材コーナーで買った、小さいビニール袋に入れて名刺を保護していたが、カードリッジを使えばとっさの名刺交換で最低限の体裁は保てるだろう。紙の名刺入れでも、ビニール袋からごにょごにょ出してくるよりはずっとましだ。

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ここぞという場面では一張羅の革製名刺入れで勝負して、万が一の場面では紙の名刺入れで間に合わす。そういうスマートなソリューションを可能にするのが、カードリッジというアイデア商品だ。